<総 評>
今年の傾向の一つとして、先の大戦を主題にした作品が多かったことがあげられる。世界平和を願ううえで決して風化させてはならない戦争体験が、五十余年を経た今日、ともすれば忘れ去られようとしている。そのような世相へのそれらは警鐘として読みとれる。いずれも真正面から書き込まれてあり、深い感銘を与えるものであった。
福祉問題・環境問題、「ふるさと彦根」への愛着を綴った作品等々、いずれも身の回りの事象を自分自身の目と体験を通して語ろうとする姿があった。文章力には大きな差異はない。あとは自らのテーマをどのように絞り込んでいるかが、読むものの心をどれだけとらえるかの鍵となっている。
前年度に比し応募数が減ったので、入選枠をしぼった。そのため、やむなく選外となった作品もあった。「入選」は、もちろん一つの目標である。しかし、「書く」「自分を見つめる」ということにも意義を見いだし、来年度も多数応募のあることを望みたい。
中島伸男 |
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