水質管理目標設定項目の解説
1 アンチモンおよびその化合物
半導体材料や鉛、スズなどの合金に使用される。毒性は強く、急性中毒として嘔吐、下痢、皮膚炎など、慢性中毒として心臓、肝臓、腎臓障害などの症状があらわれる。汚染源としては、アンチモン使用工場からの排水が考えられる。目標値は、毒性を考慮して定められている。
2 ウランおよびその化合物
原子力発電所の燃料として使用される放射性元素である。ごく微量に岩石や海水中にも広く分布しており、地下水などで検出されることがある。毒性が大変強く、腎臓に蓄積し腎臓障害の症状があらわれる。目標値は、毒性を考慮して定められている。
3 ニッケルおよびその化合物
ステンレスやメッキの原料として使用される。大量に摂取するとめまい、嘔吐、急性胃腸炎などの症状があらわれる。汚染源としては、工場排水やニッケルメッキからの溶出が考えられる。目標値は、毒性を考慮して定められている。
5 1,2-ジクロロエタン
塩化ビニルの原料として使用される有機化学物質である。過去、地下水で検出事例が多くあったため、水質基準項目の一つであったが、近年、水道水からの検出事例がほとんどなくなったことから、水質基準項目から外され、水質管理目標設定項目となった。発ガン性の可能性が高い物質であり、目標値は発ガン性を考慮して定められている。
8 トルエン
シンナー、接着剤、塗料の原料として多く使用される有機化学物質である。急性中毒として中枢神経系への影響、疲労、頭痛、めまいなど、慢性中毒として運動失調、平衡障害、言語障害などの症状があらわれる。発ガン性の可能性は低く、目標値は、毒性を考慮して定められている。
9 フタル酸ジ(2-エチルへキシル)
プラスチックに柔軟性を持たせるために使用されている有機化学物質である。目標値は、環境ホルモンとしての疑いを考慮して定められている。
10 亜塩素酸
二酸化塩素による消毒副生成物として生じる。現時点では二酸化塩素の使用実績がないため水質管理目標設定項目として定められた。目標値は、毒性を考慮して定められている。
12 二酸化塩素
現時点では二酸化塩素の使用実績がないため水質管理目標設定項目として定められた。目標値は、毒性を考慮して定められている。
13 ジクロロアセトニトリル
トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。毒性が高いとの報告があり、目標値は毒性を考慮して定められている。
14 抱水クロラール
トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。毒性が高いとの報告があり、目標値は毒性を考慮して定められている。
15 農薬類
殺虫剤や除草剤などのさまざまな用途に多くの種類の農薬が使用されている。一般に売られている薬剤には何種類かの農薬が混合されたものもある。農薬は種類が多く、毒性などがそれぞれ異なるため、物質の特定や評価が困難である。水道水に混入する可能性が高い農薬102種類についてそれぞれの目標値を設定し、総農薬方式という評価方法が採用されている。目標値は、地域の状況を勘案して設定した測定対象農薬について総農薬方式により検出指針値が1を超えないように定められている。
16 残留塩素
水道水に入れる塩素の残量である。残留塩素は法令により、1リットルあたり0.1ミリグラム以上確保することが義務付けられているが上限が決まっていない。残留塩素が多いと水道水に塩素臭を与え、水の味を悪くする。目標値は、水道水をおいしく保つために定められている。
17 カルシウム、マグネシウム等(硬度)
水質基準で石鹸の洗浄効果を損なわないために1リットルあたり300ミリグラム以下と定められているが、硬度が高いとおいしく感じない人がいるため、「おいしい水研究会」が提言した硬度の量1リットルあたり10~100ミリグラムが目標値として定められている。
18 マンガンおよびその化合物
水質基準値は、水道水の黒水障害の発生を防止する観点から定められているが、より質の高い水道水の供給を目指すため基準値の1年5月が目標値として定められている。
19 遊離炭酸
水道水中の炭酸のことで、適度に含まれることにより、水に清涼感を与える。多量に含まれると刺激が強くなる。水道水をおいしく保つために、「おいしい水研究会」が提言するおいしい水の要件の値が目標値として定められている。
20 1,1,1-トリクロロエチレン
ドライクリーニング洗浄剤、金属の洗浄剤として使用される有機化学物質である。過去に地下水で多くの検出事例がある。発ガン性、毒性も低いが、水道水に甘いにおいを与えるため水質基準項目であった。近年、検出事例が少なくなったため水質基準項目から外され、水質管理目標項目となった。目標値は、水道水ににおいがしない量として定められている。
21 メチル-t-ブチルエーテル
MTBEと呼ばれ、ガソリンの添加剤として使用される。最近、地下水から一過的に高濃度で検出されることがある。目標値は、味やにおいに影響を与えることを考慮して定められている。
22 有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)
目標値は、おいしい水の観点から定められている。全有機炭素(TOC)の量との相関を見るため、当面水質管理目標設定項目とすることになった。
23 臭気強度
水質基準値は、水の味を悪くしないことを考慮して定められているが、より質の高い水道水の供給を目指すために、「おいしい水研究会」が提言するおいしい水の要件の値が目標値として定められている。
24 蒸発残留物
水質基準値は、水の味を悪くしないことを考慮して定められているが、より質の高い水道水の供給を目指すために、「おいしい水研究会」が提言するおいしい水の要件の値が目標値として定められている。
25 濁度
水質基準値は、水道水が肉眼でほとんど濁りを感じないことを考慮して定められているが、より質の高い水道水の供給を目指すため基準値の1年2月が目標値として定められている。
26 pH値
給水管には一部材質が鉛や鉄のものがあり、水道水が酸性だとこの鉛や鉄が水道水中に溶け出しやすくなる。水道水を弱アルカリ性にすることにより、鉛や鉄を溶け出しにくくすることができる。目標値は弱アルカリ性である値が定められている。
27 腐食性(ランゲリア指数)
腐食性とは、物を溶かす力のことで、この度合いをpH値等の水質データから数値化したものがランゲリア指数である。腐食性を小さくする目的で、ランゲリア指数の目標値が定められている。
28 従属栄養細菌
一般細菌よりも低有機栄養環境下で生息する細菌である。省令改正により、平成20年度から水質管理目標設定項目に追加された。給配水系における塩素の消失や水の滞留に伴って増加するので、水道水が清浄な状態にあるかどうかを評価する指標となる。
29 1,1-ジクロロエチレン
ポリビニリデン共重合体の製造および化学中間体として使用される揮発性の合成有機化合物である。川などでは、すぐ蒸発するためほとんど汚染されていないが、地下水での検出事例がある。発ガン性の可能性があるが、これまでの実績や知見から、平成21年度の省令改正により、水質基準項目から水質管理目標設定項目へ格下げとなった。
30 アルミニウムおよびその化合物
水道水に多量に含まれると白濁する。アルミニウムは急速ろ過法による浄水処理で使用される薬品の原料であり、処理過程においてそのほとんどが除去されるが、浄水処理の工程管理によりさらに低濃度とするため、平成21年度から水質管理目標設定項目へも追加された。
31 有機フッ素化合物(PFOS,PFOA)
PFOSは、ペルフルオロオクタンスルホン酸の略。PFOAは、ペルフルオロオクタン酸の略。
泡消火剤・はっ水剤として使用されてきた。令和2年度から、水質管理設定項目へ追加された。
※4,6,7,11番は欠番
更新日:2024年09月02日