水質基準項目の解説

更新日:2019年08月30日

1 一般細菌

 一般細菌とは、水中に存在する細菌の総数を表すものではなく、特定の培養条件下で集落を形成する細菌数を表したものである。
 一般細菌として検出される多くは、直接病原菌との関連性はないが、一般細菌が多数検出される水は、病原菌に汚染されていることを疑わせる。また、塩素消毒が有効に機能しているかどうかの判断にあたり、病原菌は、通常他の一般細菌に比較して塩素に対する抵抗性が弱いため、一般細菌が基準以下であれば病原菌に対する消毒の効果が十分であると判断できることを基礎として、基準値が定められている。

2 大腸菌

 大腸菌試験は赤痢菌等の水系伝染病の発生を防ぐ目的として、糞尿に汚染されているかの判定のために行うものである。病原性による汚染の疑いのない水とするために大腸菌について検出されないこととの基準が定められている。

3 カドミウムおよびその化合物

 自然水中に含まれることはまれであるが、鉱山排水や工場排水から混入することがある。毒性は蓄積性の有害物質であり、長期間の摂取により腎機能障害や骨障害を起こすことが知られている。特に富山県のイタイイタイ病は有名である。

4 水銀およびその化合物

 水銀は、一般に無機水銀化合物と有機水銀化合物(アルキル水銀化合物等)に分けられる。毒性は急性毒性よりも慢性毒性が問題であり、特に有機水銀は人体に蓄積し、中枢神経への強い障害を与える。よく知られている病気に水俣病がある。

5 セレンおよびその化合物

 自然水中に含まれることがあるが、多くは鉱山排水、工場排水などの混入による。セレンの毒性は古くから、高濃度セレンを含有する牧草を摂取した家畜に倒病等が起こることで知られている。長期間の経口摂取により、慢性症状として貧血や肝臓障害を引き起こす。

6 鉛およびその化合物

 地質、工場排水、鉱山排水などに起因することがあるが、水道水中の鉛の存在は主に鉛給水管からの溶出によることが多い。蓄積性の有害物質であり、高濃度の水を長期間飲用すると、貧血や血色素量の低下、神経系の障害を引き起こすことがある。

7 ヒ素およびその化合物

 自然界にあっては主として銅、鉄、水銀、ニッケルなどの鉱物と共存し、自然水中に溶出することがある。ヒ素は、蓄積性のある有害物質であり、長期間の摂取により爪や毛髪の萎縮、肝硬変、知覚麻痺等がある。

8 六価クロム化合物

 自然水中には殆ど存在しないが、鉱山排水、工場排水等の混入によって含まれることがある。毒性については、皮膚接触や吸入等による組織の損傷、肺がん等の影響が知られているが、飲料水からの摂取に伴う健康障害の例は報告されていない。

9 亜硝酸態窒素

血液中のヘモグロビンと反応して酸素を運べなくする作用がある。平成26年4月から、水質管理目標設定項目から水質基準項目に格上げされた。

10 シアン化物イオンおよび塩化シアン

 シアン化合物は、青酸カリ等で代表される人体に有害な物質として一般によく知られており、急性毒性は極めて強く致死率は高い。したがって飲料水中のシアン濃度はできるだけ低いレベルであることが望ましい。基準値1リットルあたり0.01ミリグラム以下であれば、十分に安全なレベルである。

11 硝酸態窒素および亜硝酸態窒素

 水中に含まれる硝酸イオン中の窒素と亜硝酸イオン中の窒素の合計量である。土壌的要因などにより深層地下水等に高濃度に含まれることがあるが、生活排水や、し尿等汚水の混入によっても含まれることになるため、これらの物質を含むことは糞便性汚染の指標となる。
 基準値は、亜硝酸性イオンによる六か月以内の乳児のメトヘモグロビン(酸素運搬機能のない血色素)血症を予防し得る十分に安全なレベルとして定められている。硝酸イオンは生体内で速やかに亜硝酸イオンに還元されるので、硝酸イオンも亜硝酸イオンと同等の作用をもたらすと考えられるので、基準の濃度は合計量で表示される。

12 フッ素およびその化合物

 自然界に広く存在し、地下水中では比較的高濃度に含有されることがある。また工場排水の混入などにも起因する。フッ素濃度が高いと、班状歯の形成比率が増えるが一方では虫歯の発生率が低下することも認められている。

13 ホウ素およびその化合物

 金属の表面処理等に使用され、これらの工場からの排水、火山地帯の地下水や温泉が汚染源として考えられる。中毒症状として重くなると血圧低下、ショック症状や呼吸停止などの症状があらわれる。基準値は、毒性を考慮して定められている。

14 四塩化炭素

 フロンガス製造、金属洗浄用の溶剤、塗料やプラスチックの製造等に使用される揮発性の合成有機化合物である。工場排水の地下浸透により、地下水を汚染することがある。発ガン性の可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

15 1,4-ジオキサン

 非イオン界面活性剤を製造する過程で不純物として発生するため、洗剤などの製品に不純物として含有している。発ガン性の可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

16 シス-1,2-ジクロロエチレンおよびトランス-1,2-ジクロロエチレン

 プラスチックの原料として使用される有機化学物質である。川などでは、すぐ蒸発するためほとんど汚染されていないが、地下水で多くの検出事例がある。発ガン性の可能性が低いが、比較的毒性が高く、高濃度では麻酔作用がある。基準値は発ガン性を考慮して定められている。

17 ジクロロメタン

 殺虫剤、塗料、ニス、塗料剥離剤、食品加工中の脱脂および洗浄用として使用される揮発性の合成有機化合物である。川などでは、すぐ蒸発するためほとんど汚染されていないが、地下水で多くの検出事例がある。発ガン性のある可能性が高い物質であり、比較的毒性も高く、高濃度では麻酔作用がある。基準値は、発ガン性を考慮して定められている。

18 テトラクロロエチレン

 有機物の溶剤、ドライクリーニングの工程、金属部品の脱脂剤、フルオロカーボン合成の中間体、織物工業等に使用される揮発性の合成有機化合物である。川などでは、すぐ蒸発するためほとんど汚染されていないが、地下水で多くの検出事例がある。発ガン性のある可能性が高い物質であり、比較的毒性も高く、頭痛や肝機能障害などの症状があらわれる。基準値は、発ガン性を考慮して定められている。

19 トリクロロエチレン

 工業用の溶剤、金属部品の脱脂剤等広く金属化工業等に使用される揮発性の合成有機化合物である。地下水で多くの検出事例がある。発ガン性のある可能性が高い物質であり、比較的毒性も高く、嘔吐、頭痛などの症状があらわれる。基準値は、発ガン性を考慮して定められている。

20 ベンゼン

 合成原料としての染料、合成ゴム、合成洗剤、有機顔料等に使用される揮発性の合成有機化合物である。発ガン性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

21 塩素酸

 塩素消毒のために使用される二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウムから消毒副生成物として生じる。もともと水質管理目標設定項目として挙げられていたが、水道水からの検出事例が見受けられることから、省令改正により、平成20年度から水質基準項目へと変更された。

22 クロロ酢酸

 トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。毒性が強いとの報告があるため、基準値は、毒性を考慮して定められている。

23 クロロホルム

 浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されるトリハロメタンの主要構成物質である。クロロホルムは毒性が強く、中枢神経を抑制するため麻酔剤として使われ、過剰投与で死に至ることもある。また、肝臓や腎臓の機能障害を引き起こす。発ガン性のある可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

24 ジクロロ酢酸

 トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。発ガン性のある可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

25 ジブロモクロロメタン

 浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されるトリハロメタンの構成物質であり、その生成量は原水中の臭素イオン濃度により大きく変化する。発ガン性のある可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

26 臭素酸

 塩素消毒のために使用される次亜塩素酸ナトリウムに不純物として含まれる。また、原水中の臭素と高度浄水処理のオゾンが反応して生成される。発ガン性のある可能性が高い物質であり、基準値は発ガン性を考慮して定められている。

27 総トリハロメタン

 浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成される。主要な構成物質としてクロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタンおよびブロモホルムがあり、その合計を総トリハロメタンとしている。基準値は、発ガン性を考慮および消毒副生成物全生成量を抑制する総括的指標として定められている。

28 トリクロロ酢酸

 トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。医療用や除草剤、防腐剤に使用される。発ガン性のある可能性が高い物質であり、毒性も強い物質である。基準値は発ガン性を考慮して定められている。

29 ブロモジクロロメタン

 浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されるトリハロメタンの構成物質であり、その生成量は原水中の臭素イオン濃度により大きく変化する。基準値は、発ガン性を考慮して定められている。

30 ブロモホルム

 浄水過程で、水中のフミン質等の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成されるトリハロメタンの構成物質であり、その生成量は原水中の臭素イオン濃度により大きく変化する。基準値は、発ガン性を考慮して定められている。

31 ホルムアルデヒド

 シックハウス症候群の原因物質としてしられている。トリハロメタンと同様に水に含まれる有機物質と塩素が反応してできる物質である。発ガン性のある可能性が高い物質であり、呼吸困難めまい、嘔吐の症状があらわれる。基準値は発ガン性を考慮して定められている。

32 亜鉛およびその化合物

 人間にとって必須な元素であり、欠乏すると味覚障害や食欲減退などを引き起こす。自然水中に亜鉛が存在することはまれであるが、鉱山排水、工場排水の混入、または亜鉛メッキ鋼管からの溶出に起因することもある。亜鉛の毒性は弱く、飲用しても健康上の支障はないが、高濃度の亜鉛を含む水は、金属味がしたり、灰濁するため、これらの障害を防止する観点から基準値が定められている。

33 アルミニウムおよびその化合物

 アルツハイマー病の原因物質とも言われているが、確認されていない。水道水に多量に含まれると白濁する。アルミニウムは急速ろ過法による浄水処理で使用される薬品の原料であり、処理過程において砂や泥と一緒に除去されるため、水道水にはほとんど影響を与えない。基準値は、水道水が白濁しない量として定められている。

34 鉄およびその化合物

 人間にとって必須な元素である。自然水に多く含まれ、鉱山排水、工場排水などの混入、あるいは鉄管に由来することもあり、水中では種々の存在形態をとる。鉄を多く含む水は、配水管等の内部で鉄バクテリアを繁殖させ、錆こぶを形成して通水を阻害し、また、赤水等を発生させる原因となる。基準値は、味覚および洗濯物への着色を防止する観点から決められている。

35 銅およびその化合物

 人間にとって必須な元素である。鉱山排水、工場排水、農薬の混入や生物抑制処理に使用する硫酸銅、塩化銅および給水装置等に使用する銅管、真ちゅう器具などからの溶出に起因することが多い。銅を高濃度に含む水を長期にわたり飲用すると、皮膚や毛髪が緑色に変化する等の症状が現れることがある。基準値は、洗濯物や水道施設の着色を防止する観点から定めたものであり、健康影響を生ずる恐れのある濃度よりはるかに低いものである。

36 ナトリウムおよびその化合物

 人間にとって必須な元素である。自然水中に広く存在する元素であるが、海水、工場排水などの混入による場合や、苛性ソーダによるpH調整、次亜塩素酸ナトリウムによる塩素処理などの浄水処理に由来することもある。基準値は、味覚の観点から定められている。

37 マンガンおよびその化合物

 人間にとって必須な元素である。水中のマンガンは、主として地質に起因するが、鉱山排水、工場排水などの混入が原因となることもある。また、湖沼・貯水池・河川の低層水の溶存酸素が少なくなると底質から溶出してくることもある。基準値は、黒水障害の発生を防止する観点から決められている。

38 塩化物イオン

 常に自然水中に含まれており、その量は水系によってほぼ一定している。多くは地質に由来するもので、特に海岸地帯では海水の浸透によるところが大きい。また、塩素イオンは、下水、家庭排水、工場排水およびし尿の混入によって増加することもあるため、塩素イオンの急増な変化は汚濁の指標ともなりうる。基準値は、一般の人が塩味を感じない程度のレベルとして定められている。

39 カルシウム、マグネシウム等(硬度)

 カルシウムやマグネシウムを多く含む水は、硬い味がする他、石鹸の泡立ちが悪くなるため、このような障害を防止する観点から基準値が定められている。

40 蒸発残留物

 水中に浮遊したり溶解して含まれているものを蒸発乾固して得られる総量のことである。基準値は、味覚の観点から定められている。

41 陰イオン界面活性剤

 合成洗剤の有効成分であるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)等、メチレンブルーによって青色の錯化合物を形成するものである。これらは、工場排水、家庭下水などの混入に由来する。基準値は、水道水中の陰イオン界面活性剤の発泡障害が生じないことを目的として定められたものであり、この濃度以下であれば、臭味および健康障害が問題となることはない。

42 ジェオスミン

 カビ臭物質であり、基準値は一般の人がカビ臭を感じない量として定められている。

43 2-メチルイソボルネオール

 カビ臭物質であり、基準値は一般の人がカビ臭を感じない量として定められている。

44 非イオン界面活性剤

 陰イオン界面活性剤と同様に合成洗剤の主要な成分で、水道水にある程度含まれると泡が発生するようになる。基準値は、泡が発生しない量として定められている。

45 フェノール類

 フェノール(石炭酸)および各種のフェノール化合物の総称である。フェノール類は自然水中には含まれていないが、工場排水等によって混入されるものである。フェノール類を含む水は、塩素消毒するとクロロフェノールの不快な臭味を与えることがある。基準値は、臭味発生防止の観点から定められているが、これは、健康影響を生ずる恐れのある濃度よりはるかに低い値である。

46 有機物全有機炭素(TOC)の量)

 有機汚濁の指標である。基準値は、水道水の味を悪くしない量として定められている。

47 pH値

 水の酸性、アルカリ性については、pH値を指標として基準値(5.8~8.6)が定められており、pH値がこの範囲内であれば、その水は中性または中性に近い状態にある。地下水は遊離炭酸を多く含むことがあり、pH値が6前後になることがある。pH値は汚染等による水質変化の指標となり、また凝集処理においては薬品注入量の決定や注入の良否、水道機材に対する腐食性の判定に有効である。

48 味

 水の味は、地質または海水・鉱山排水・工場排水・下水の混入および藻類等生物の繁殖に伴うものの他、凝集処理の不良、配管の腐食によることがある。無機質を多く含むと不快味を与え、鉄、銅、亜鉛、マンガン等は金気味、渋味を与える。

49 臭気

 水の臭気は、プランクトン、鉄バクテリア、放線菌等生物の繁殖、工場排水、下水の混入、地質などの他、水の塩素処理に起因する。また送・配・給水管の内面塗料剤等に由来することもある。

50 色度

 鉄、マンガン、亜鉛等の金属やフミン質等の有機物に由来するものであり、水に色がついていることは、水道水の快適な使用に支障を及ぼすだけでなく、他の物質による汚染などの指標となるものである。色度が基準値以下であれば、ほとんど無色であり使用等に支障はない。

51 濁度

 水の濁りの程度を示すもので、水道水の快適な使用に支障を及ぼすものであるが、他の物質による汚染などの指標となるものである。また、浄水場における凝集剤やろ過池の操作に大きな影響を与え、浄水の濁りは浄水管理の良否を示す指標となる。給水栓水の濁りは、配・給水施設や管の異常を示すものとして重要である。クリプトスポリジウム対策指針により、汚染対策として浄水場出口の濁度が0.1度以下に維持されるよう、浄水処理を徹底することとされている。

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