世界遺産登録に向けた取り組み(平成26年度)
県市連絡調整会議と作業グループの設置
滋賀県教育委員会との連携を密にし、進捗状況や今後の進め方の確認を行うため、平成26年度に月例の県市連絡調整会議を設置しました。
県市連絡会議の指示のもとに、市職員および外部有識者によって構成される作業グループを平成26年8月に設置し、平成26年度内に計14回開催しました(下表参照)。作業グループは、彦根城および関連遺産について基礎的調査の実施とそれに基づく学問的考察および資料の作成、比較研究を通したコンセプトの探求と普遍的価値の証明を目的とするものです。彦根市副市長を座長とし、主として建築、歴史、美術を専門とする学芸員および技術職員等によって構成しています。
作業グループでの検討内容は、県市連絡会議に随時報告して滋賀県教育委員会の意見を求め、次回以降の検討作業に反映させました。
回数 | 開催日 | 内容 |
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第1回 | 8月26日 | 世界遺産を目指すストーリーについての意見交換 |
第2回 | 9月3日 | ストーリーに関わる検討課題についての意見交換 |
第3回 | 9月11日 | メンバーによる個別研究報告
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第4回 | 10月20日 | 外部学識経験者との意見交換 |
第5回 | 11月5日 | メンバーによる個別研究報告
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第6回 | 11月13日 | メンバーによる個別研究報告
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第7回 | 11月26日 | メンバーによる個別研究報告
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第8回 | 12月12日 | メンバーによる個別研究報告
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第9回 | 12月17日 | メンバーによる個別研究報告
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第10回 | 12月25日 | メンバーによる個別研究報告
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第11回 | 1月26日 | 姫路城との比較に関する討議 |
第12回 | 2月3日 | 準備状況報告書作成についての打合せ |
第13回 | 2月13日 | 構成資産候補リストアップについての討議 |
第14回 | 2月24日 | 準備状況報告書の内容についての討議 |
特別史跡彦根城跡保存管理計画の見直し
昭和59年策定の保存管理計画を2カ年計画で抜本的に見直すこととし、外部有識者6名によって構成される「特別史跡彦根城跡保存管理計画・整備基本計画検討委員会」を新たに設置して、検討に着手しました。
ユネスコ世界遺産センター、フランス・ イコモス訪問と意見聴取
平成26年6月に彦根市副市長が「顕著な普遍的価値」の証明のための国内外の類似資産の比較研究と資産の分析について複数の専門家から詳しい説明を受け、コンセプト探求については、以下のような示唆を得ました。
- 城郭のみでは、単独でも複数でも、登録は難しいのではないか。1000件に上るこれまでの登録テーマとも、日本の城郭や庭とも、全く異なるコンセプトを探求すべきである。幸い彦根市には他の城にない江戸時代の都市計画、行政機構や文化政策を雄弁に物語る多くの遺産がある(フランス・イコモス事務局長)。
- 「封建領主の精神的・文化的生活」のような方向性で考えるのがよい(同上)。
- 韓国でも支配者層による文芸の振興があり、支配者層による社会の文化的交流の比較等を基礎にした構想も考えられる(ユネスコ世界遺産センター・アジア担当官)。
ユネスコ世界遺産センター、世界遺産専門家に対する意見聴取
平成27年1月、作業グループでの検討作業の成果にもとづき彦根市副市長がユネスコ世界遺産センターおよびヨーロッパのイコモス関連専門家を再度訪問し、コンセプト探求の方法、国内外比較研究の方法と視点および資産分析の方法について意見聴取を行いました。これらの課題に関する専門家の回答には共通点が多く、主に以下のような見解がありました。
- 姫路城がすでに登録されているので、彦根市は姫路とはまったく異なるコンセプト登録をめざし、「例外的」な文化的価値を示す必要がある。そのためには資産の「科学的・技術的」かつ詳細で緻密な分析をし、国内外の比較を深め、普遍的価値が彦根市の史跡および文化遺産のみによって「証明」できることを示す必要がある。単なる歴史描写や主観的な評価は、世界遺産登録プロセスに貢献しない。彦根市は、中世・近世城郭都市について、国内外の科学的・技術的比較研究を行い、城と関連資産の普遍的価値を抽出すべきである。国際比較には、ヨーロッパおよび韓国を入れるべきであろう (フランス、イタリアの建築専門家)。
- 城郭の比較研究は、歴史、建築学および美術史等の専門家から総合的に行うべきである。日本の城については、英訳された著書が多くあり、以前からそれを読んでいた。彦根城は、軍事施設というより権力のシンボルとしての役割をはたしているように思われる(フランスの城郭専門家)。
- コンセプトに対応する構成資産の分析と保存管理計画を同時進行させ、集中して行う必要がある。登録に向けて必要な作業を貫徹させる勢いが必要(フランス・イタリアの専門家)。
- 日本の専門家および文化庁の意見を聞き、協力と助言を得ながら、比較研究や資産分析を進めるべきである(イタリアの建築専門家、フランスの城郭専門家)。そのためこれら専門家と海外の専門家の参加する準備会合を開くべき(イタリアの建築専門家)。
- 250年間安寧が続いた江戸時代における彦根藩の役割と城のシンボル的な役割や、寺社その他の文化的・精神的伝統を通した藩内の社会的調和を築いた統治方法および文化を通した交流政策が注目される(ユネスコ世界遺産センター)。
- 琵琶湖など、水の役割に注目した都市計画が浮き彫りにする文化的景観が印象的である。(ユネスコ世界遺産センター長)。
- 都市化の進んだ市において文化的景観としての登録を目指すことは十分現実的とはいえない。彦根領主による都市計画がいかなる意味で「社会的調和と美」を生み出すことになったかについての研究のため、城郭都市の国際比較を専門とするヨーロッパや韓国の専門家を紹介する(同センター・アジア担当官)。
市民に向けた広報
- 啓発看板の設置(2ヵ所、平成23年度から)
市役所庁舎前:「彦根城を世界遺産に!」、「彦根城は世界遺産の候補です!」
彦根駅:「彦根城を世界遺産に! 彦根城は世界遺産登録暫定リストに登載されています」 - 世界遺産啓発用リーフレットの作成、配布(平成23年度から)
- 出前講座等による啓発の実施(平成25年度から)
- 小学生用ガイドブック『彦根城を世界遺産に』を作成し、市内の小学校6年生全員に配布(平成25年度から)
- マンガ『彦根の歴史』日本語版作成(平成26年度)
- 彦根市ホームページに英文で彦根城を紹介(平成26年度)
- 啓発ステッカー「未来へ残そう! 彦根城を世界遺産に!」を作成し、市内事業所や公共施設に配布(平成26年度)
体制整備
従来の彦根城世界遺産登録推進室とは別に、教育委員会文化財部に彦根城世界遺産登録準備室を設置して、技術系職員2名を配置しました。うち1名については、滋賀県教育委員会から文化財専門職員の派遣を受けました。
更新日:2024年09月02日