第3回 新型コロナウイルス感染症と人権問題(2020年5月)

更新日:2020年05月29日

新型コロナウイルスの影響は計り知れません

2020年の始まりとともに、中国、武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症は、またたく間にアジアからヨーロッパ、アメリカ、さらに全世界へと感染が拡大し、今もその勢いは衰えていません。各国は、都市封鎖や感染者を確認するPCR検査などの感染防止対策とともに感染者への懸命の治療を行っています。

わが国も同様に、感染防止のため、不要・不急の外出を自粛し、手洗いの励行、消毒、マスクの着用と、3つの密(密閉・密集・密接)を避け、人と人との距離の確保などの取組みが全国的に進められています。特に、3月末からの急激な感染拡大で、4月に東京を中心とした大都市に「緊急事態宣言」が発令され、その後全国へと拡大されて、緊張度が一気に高まりました。業種による休業要請や徹底した感染防止対策が奏功して、5月中旬から下旬にかけて感染者数も大幅に減少し、「緊急事態宣言」が解除されました。しかし、少しの気のゆるみで、また、感染の増加につながる恐れもあります。全国の一部の地域では、すでに第2波と思える感染の拡大がみられます。私たちの身の回りから感染防止対策を継続していく必要があります。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は大きく、これまでの社会のあり方そのものが急激に変わっていくことを多くの人が感じているように思います。

新型コロナウイルスによる差別を乗り越えるために

あたたかい うれしいことば ありがとう

       彦根市はーとふるメッセージ2019 入選

                 高宮小学校 堀田 悠介 さん

社会が変化していく中で、予期しなかった人権上の問題も発生しています。新型コロナウイルスに感染した人やその家族への中傷や差別。また、献身的に働く医師や看護師などの医療従事者を差別したり、その子どもが保育園への登園を拒まれるという事例も報告されています。

では、なぜこのような人権問題が起きているのでしょうか。その原因は一つだけでなく、様々な事柄が関係しているように思います。人は誰でも未知のウイルスに怯え、もし感染したらどうしようという漠然とした不安や恐怖心があります。そして、身近なところに感染の危険が迫っていると感じると、自己防衛の本能からそれを避けたり、排除したりしようとする意識が強く働くと言われています。この新型コロナウイルスは、感染しても無症状の人があり、感染防止対策を一層難しくしています。そのため、いつ、どこで感染してしまうか誰にもわかりません。目の前の人を排除したからと言って、それで一安心というわけではありません。むしろ、医療体制の弱体化につながり、自分自身が感染してしまったとき、十分な治療が受けられない危険性があります。

院内感染が発生したある病院では、厳しい批判にさらされ、差別的な扱いをされた医師や看護師がいました。そんな大変な状況下で、治療に専念する医療従事者の心の支えになったものは、市民から届いた励ましの言葉だったと言います。共感が力になり、差別を乗り越えていくのです。

インターネット上の差別とその解決に向けて

それ、侵害だから

       彦根市はーとふるメッセージ2019 入選

                   西中学校 堂野 順平 さん

4月に、新型コロナウイルスの感染拡大で、クラスター(感染者の集団)の発生元となった大学の学生への批判が高まり、差別的な内容もありました。感染と関係のない同じ大学の学生が飲食店への入店を拒否されたり、アルバイト先を解雇されたりするなどの問題が起きました。大学によると、感染を公表した3月末から、4月中頃までに抗議や批判の電話、メールが数百件寄せられたそうです。中には、脅迫的な内容もあったと言います。インターネット上では、SNS(会員制交流サイト)に学生の写真が無断でアップされたり、感染した学生の就職先にまで誹謗中傷が寄せられたりしたそうです。

「新型コロナウイルス以上に怖いのは偏見のウイルス」だという言葉もあります。特に、SNS上では、情報拡散のスピードが格段に速く、しかも広範囲にわたります。真偽が定かでない情報やデマ(フェイク)の情報を匿名性の気楽さから安易に発信したり、広めたりしている場合も見られます。

最近のある大学の調査では、「新型コロナウイルスに感染したのは、本人に責任がある」「感染したのは自業自得だ」と考える日本人の割合が欧米の4か国に比べて高い(約10倍)という結果が出ていました。感染者に対する激しいバッシングの背景に、このような意識が働いているのかもしれません。

感染を恐れ、感染したことを隠すことで、かえって感染が拡大する危険性が高まるとも言われています。新型コロナウイルスを「正しく恐れる」ために、特にSNS上に飛び交う情報を鵜呑みにせず、何が正しくて、何が間違っているのかを冷静に判断し、取捨選択していく力が「ウイズ・コロナ」の時代には大切になるでしょう。そして、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるためには、今、私たちが取り組んでいる感染防止対策を地道に徹底していきたいです。

新型コロナウイルス感染症関連リンク

次回テーマ:「インターネット」(予定)

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