第6回 新型コロナウイルス感染症と人権2(2020年8月)

更新日:2024年09月02日

HP番号: 14045

新型コロナウイルスとの闘いが続きます

2020年は、新型コロナウイルスという未知の感染症との闘いで、幕を開けました。中国の武漢市から始まり、日本では横浜港に停泊していたクルーズ船内で感染が広がり、対応する様子を日本はもとより、世界のメディアが固唾を飲んで見守っていました。しかし、それは遠い国の出来事であり、やがて自らの身に降りかかって来るとはだれも想像できなかったのではないでしょうか。

 

しばらくして、新型コロナウイルス感染症はアジアからヨーロッパ、アメリカ、さらに全世界へと感染拡大し、今もその勢いは衰えていません。日本でも感染防止のため、不要・不急の外出を自粛し、手洗いの励行、消毒、マスクの着用と、3つの密(密閉・密集・密接)を避け、人と人との距離の確保などの取組みを全国的に進めています。特に、3月末からの急激な感染拡大により、4月に東京を中心とした大都市に「緊急事態宣言」が発令されました。その後全国へと拡大されて、感染症への不安や恐れも一気に高まりました。その後、業種による休業要請や徹底した防染対策によって、5月中旬から下旬にかけて新規感染者数が大幅に減少し、重傷者数も徐々に減少したため、「緊急事態宣言」は解除されました。

 

しかし、6月末から7月にかけて、再び大都市を中心に急激な増加へと転じました。8月もその勢いは衰えず、東京以外の大都市も連日、最高感染者数を更新し、さらには地方都市へも感染が拡大して、全国的な広がりを見せています。滋賀県内でもクラスターの発生があり、感染者数は増えています。彦根市内でも感染者が出ている状況であり、私たち一人一人が身の回りの感染防止対策を継続していく必要があります。

 

この第2波は、20代~30代の若者が感染の中心で、無症状や比較的軽症の人が多いと言われています。重症者数も低く抑えられていましたが、徐々に若者から高齢者へ感染が広がるにつれて、重症者数も増えてきました。また、連日の猛暑日が全国的に続く中で、熱中症で救急搬送される人も増え続けています。熱中症とコロナ感染症の症状が似通っているため、病院ではコロナも想定し、感染防止対策をしながら受け入れているそうです。1件に時間がかかり、受け入れを制限せざるをえない状況で、結局、救える命が救えないという事態が差し迫っているということでした。

 

新たな人権問題の発生

社会が急激に変化していく中で、これまで予想しなかったような人権上の問題も発生しています。新型コロナウイルス感染症が広がり始めた頃は、治療のために働いている医師や看護師などの医療従事者が差別されたり、その子どもが保育園への登園を拒まれたりするという出来事があり、問題となりました。

 

その後、自ら感染リスクを抱えながらも、懸命に感染者の治療にあたる医療従事者への理解が深まり、感謝や励ましの声も大きくなっていきました。それとともに、差別し、忌避する事例も少なくなりました。

医療現場やそこで働く医師や看護師たちの姿を正しく知ることで、漠然とした不安から来る偏見が拭い去られていくことがわかります。共感が力になり、差別を乗り越えていくのです。

 

一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大とともに、新型コロナウイルスに感染した人やその家族への中傷や差別が深刻な人権問題となっています。私たちの彦根市や周辺の市町にまで、新型コロナウイルス感染症が迫ってきて、以前にも増して身近なものになりました。それとともに、このような人権問題がなぜ、起きて来るのか、冷静に考えてみる必要があります。

偏見や差別を引き起こすものは

偏見や差別へと突き動かす心の奥底には不安や恐怖心があります。まだまだ分からないことが多いコロナウイルスに怯え、身近に感染の危険が迫っていると感じると、だれでも自己防衛の本能からそれを避けたり、排除したりしようとする意識が強く働きます。この新型コロナウイルスは、感染しても無症状の人があり、感染防止対策を一層難しくしています。そのため、いつ、どこで感染してしまうか誰にも分かりません。

 

4月に、新型コロナウイルスの感染拡大で、クラスター(感染者集団)の発生元となった大学の学生への批判が高まり、差別的な内容もありました。感染と関係のない同じ大学の学生が飲食店への入店を拒否されたり、アルバイト先を解雇されたりするなどの問題が起きました。

大学によると、感染を公表した3月末から、4月中頃までに抗議や批判の電話、メールが数百件寄せられたそうです。中には、脅迫的な内容もあったといいます。インターネット上では、SNS(会員制交流サイト)に学生の写真がアップされたり、感染した学生の就職先にまで誹謗中傷が寄せられたりしたそうです。

 

「新型コロナウイルス以上に怖いのは偏見のウイルス」だという言葉もあります。大学としては、感染の拡大を抑え、状況を正しく理解してもらうために、あえて公表したのですが、その真意はうまく伝わりませんでした。

コロナ差別をなくすために

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SNS上では、情報拡散のスピードが格段に速く、しかも広範囲に亘ります。真偽が定かでない情報やデマ(フェイク)の情報を匿名性の気楽さから安易に発信したり、広めたりしている場合も見られます。最近のある大学の調査では、「新型コロナウイルスに感染したのは、本人に責任がある」「感染したのは自業自得だ」と考える日本人の割合が欧米の4カ国に比べて高い(約10倍)という結果が出ていました。感染者に対する激しいバッシングの背景に、このような意識が働いているのかもしれません。

 

新型コロナウイルスを「正しく恐れる」ために、特にSNS上に飛び交う情報を鵜呑みにせず、何が正しくて、何が間違っているのかを冷静に判断し取捨選択していく力が、これからは大切になるでしょう。

 

身近に感染者を知ったときに、立ち止まり、「新型コロナウイルスに感染したのは本当に自己責任なのか、自業自得と決めつけてしまっていいのか」と考え、「もし自分や自分の家族が知らないうちに感染してしまい、周りから誹謗中傷されたらやり場のない怒りを感じる」はずです。

感染した人を詮索したり、誹謗中傷したりするのは明らかに間違っています。

 

次回テーマ:「同和問題」(予定)

今号は、予定を変更して、コロナウイルス感染症を取り上げました。

「ハンセン病元患者・家族の人権問題」の掲載は未定です。

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