第13回「ありがとう」の幟 ~安清町の取組~(2021年3月)

更新日:2021年03月01日

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、私たちの命と暮らしが、医療従事者をはじめとする様々な人々の献身的な活動によって支えられている、ということをあらためて実感されたのではないでしょうか。しかし、残念ながら、いわゆるコロナ差別と言われる新たな人権侵害事象が全国的にも報道され、差別や偏見があることも浮き彫りになりました。

こうした状況の中、人を思うやさしさを大切にし、ウイルスにも差別事象にも打ち勝つために、自分たちでできることをやろうと取り組まれた自治会の活動をご紹介します。

取組のきっかけ

鮮やかな青地に黄色の文字で「ありがとう」と書かれたこの幟(のぼり)は、令和2年(2020年)6月、彦根市の安清町(やすきよちょう)の自治会が独自の活動として設置されたものです。幟は、町内のごみ集積所など各所に設置されています。

ありがとうののぼり

町内に設置された幟

安清町は、昔ながらの街並みが残り、町内の道路は幅が狭く、大きなごみ収集車が通行できないことから、ごみの収集には軽トラックが活用されています。ところが、4・5月は自粛生活の影響で、ごみ集積所には入りきらないほどの大量のごみがありました。ある日、作業員の方は、汗だくになりながら、たくさんのごみをなんとか荷台に積もうと奮闘されていました。住民の方が自転車でその場に差し掛かり、作業が終わるまで待とうとしていると、「すいませ~ん、どうぞ」と明るく通してくださったそうです。住民の方の口から思わず出た言葉は「ありがとうございます!」でした。

暮らしを支える人々への感謝の気持ちが、取組のきっかけとなりました。

「ありがとう」があふれるまちへ

ある調査では、言われて嬉しい言葉の第1位は「ありがとう」でした。別の調査でも、あったかい言葉の第1位は「ありがとう」でした。

安清町では、高齢者比率が高いことから、地域で高齢者を守り支え、子育てを応援することが課題となっています。新型コロナウイルス感染症の影響で、従来開催されていた、町内行事やお祭りといった、住民同士がふれあう機会が減少しました。「ありがとう」をお互いに伝え合うことで、心地良い時間を共有でき、トラブルを防ぐ潤滑油としての役目を果たすのではないかと考え、人と人の心をつなぎ、人と町をつなぐ、そんな橋渡しが「ありがとう」の言葉でできるなら見える形で表そうと取り組まれたのが、この幟です。

幟の爽やかな青色は、琵琶湖と昔町内を流れていた川をイメージしています。そこに黄色の「ありがとう」の文字は遠くからもはっきりと見え、全体的に大変よく目立ちます。

また、幟には「わたしが好き あなたが好き このまちが大好き」と書かれています。

 

「わたしが好き」 … 自分を大切にする

「あなたが好き」 … 他人(ひと)を大切にする

「このまちが大好き」… そんな人たちが住んでいる安清町が大好き

 

というメッセージが込められています。

彦根市民人権宣言に賛同!

彦根市民人権宣言へ賛同

彦根市民人権宣言に賛同された安清町自治会役員のみなさん

令和2年12月、彦根市人権教育推進協議会と彦根市が共同で新型コロナウイルス感染症に関する「彦根市民人権宣言」を出しました。これは、「ありがとう」をそれぞれの頭文字とすることで、すべての人に感謝の心を忘れず、市民一丸となってコロナ差別を許さないという決意を表明するものです。

安清町の「ありがとう」の幟の取組は、まさにこの宣言の趣旨に合致するものでした。

「ありがとう」の言葉が広がり、町内にあふれることで、自分を大切にし、他人(ひと)を大切にするまちになることを目指されています。最初は、道行く人に「これ何?」と尋ねられて趣旨を説明することもあったそうですが、「市内全域に広がるといいね」という声をいただくなど、現在では好評とのことです。

こういった取組こそが、相手を思いやる気持ちを育み、差別や偏見を抑止する地道な大切な活動だと思います。お互いに感謝の気持ちを伝えるということが、互いの人権意識を養うことに繋がります。少し照れ臭い場合もあるかもしれませんが、そんな時に目に映った幟が背中を一押ししてくれる、そんなぬくもりのある活動です。

「ありがとう」の幟は、今日も安清町のあちこちで輝いています。

次回テーマ:未定

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