人権教育の指針
令和7年4月
2025年は終戦から80年の節目の年です。世界では、最大の人権侵害である戦争が各地で続いており、多くの尊い命が失われている。私たちにはそのような状況に自分事として向き合い行動するとともに、戦争の記憶を風化させず、平和への思いをつないでいくことが求められている。一方、国内に目を向けると、来年、人権三法の公布・施行から10年を迎える現在においても、部落差別をはじめとする多様な人権問題が存在し、差別のない社会の実現に向け、問題の解決への様々な取組が続けられているところである。
本市では、令和6年4月に彦根市人権施策基本方針が改定された。人権が尊重されるまち彦根の実現のためには、市民一人ひとりの人権意識の高揚と人権の意義や価値について理解を深めるとともに、すべての人の人権を尊重する態度を身につけ、行動することが重要である。
そこで、本市人権施策基本方針や滋賀県教育委員会「人権教育推進プラン改訂版」等の各種方針をふまえ、本市の「人権教育の指針」を策定し、地域社会、家庭、職場、学校などあらゆる場や機会を捉え、本市における人権教育の推進および取組の一層の充実を図る。
目標
国内外ならびに本市における人権問題の現状と課題を踏まえ、人権尊重の理念を理解し、体得することを市民の中に定着させるために、これまで人権・同和教育が積み上げてきた取組の成果や手法への評価を踏まえた教育・啓発活動を積極的に展開する。特に部落差別をはじめとする女性、子ども、高齢者、障害者、外国人等に関わる人権問題はもちろんのこと、感染症や性的マイノリティに関する人権問題、インターネット上の人権問題、またヤングケアラーを取り巻く問題などの新たな人権問題についても、法の下の平等、個人の尊重等の基本理念を踏まえ、それぞれのもつ固有の問題を個別的な視点から十分見極めるとともに、普遍的な視点からも取組を進め、相互に関連づけあいながら解決を図る。また、「部落差別解消推進法」、「改正障害者差別解消法」、「こども基本法」等の趣旨を踏まえ、差別のない社会の実現に向けて教育・啓発活動の一層の充実を図る。
幼稚園・こども園・保育園(所)における取組は、乳幼児の発達段階に応じて、家庭と幼稚園・こども園・保育園(所)等の連携を図りながら、日常生活における基礎的な事項を身につけさせるとともに、遊びや仲間との活動を通して豊かな感性、命の大切さや相手を思う気持ちを育てる。
学校における取組は、児童・生徒の人権意識の高揚を図るため、個々の自尊感情を高めるとともに、他者を尊重し、お互いの人格を認め合う自立と共生の意識を深めさせる。また、感性を磨き、差別やいじめの不合理性についての理解を深めさせるとともに、人間性豊かな人格の形成と実践的な態度を育成し、社会へ主体的に参画する市民としての素地を確立するため、人権教育を全教育活動の中に明確に位置づけて実施する。
地域社会における取組は、市民があらゆる差別の不合理性や人権確立への歩みを学び、家庭や地域の生活課題との関連を明らかにしながら、心豊かでお互いの人権が認め合える地域社会の形成をめざす学習を積極的に実施する。とりわけ、差別の現実に立ち、人間の尊厳への自覚、自己実現への意欲および共生社会への連帯意識を高めることを基本に、心の通いあうまちづくりを推進する。なお、人権問題の中心に部落差別問題を据え、地域総合センターおよび広野教育集会所を拠点とし、積極的に心理的差別の解消およびその解決を目指して主体的にかかわる実践的態度の育成に努める。
学校・園における取組
人権教育を学校・園の全教育活動に明確に位置づけ、幼稚園、こども園、保育園(所)、小・中学校の緊密な連携のもと、幼児・児童・生徒の発達段階に即して、人間形成の基礎を培うとともに、人権問題についての正しい理解と認識を培う。また、系統性・発展性のある総合的な人権学習を構築し、人権尊重の実践的態度を育成する教育活動の充実を図る。
- 生涯にわたる人間形成の基礎を培う乳幼児期の教育・保育の重要性を踏まえ、家庭や地域等との連携を図りながら、自然や人とふれあう体験を通して命を大切にする心や相手を思う気持ちを育む取組の充実に努め、豊かな人間関係の基礎となる信頼関係を築く。
- 児童・生徒の人間形成について、学校の果たす役割を十分認識し、部落差別をはじめとする人権問題についての正しい理解と認識を培う。また、一人ひとりの自尊感情を育む取組を進め、差別やいじめ等をしない、許さない心情を育てるとともに、人権意識の高揚を図り、人権尊重の精神を実践的態度に高めるための取組を一層充実する。特に部落差別問題に関する学習については、児童・生徒の心に響く学びとなるよう、点検と見直しを図る。
- 重い課題のある幼児・児童・生徒の個に応じた生活と学力の向上を目指し、適正な進路指導を進める。また、一人ひとりの自己実現を図るために、家庭や関係機関との連携を強化し、支援体制の充実を図る。
- 幼・こ・保・小・中学校の一層の連携を図り、系統性・発展性のある総合的な人権学習を構築するとともに、地域や関係機関と連携・協力しながら、実態や課題に即した学習を展開する。
- 教職員は、あらゆる機会を利用して、部落差別をはじめとした人権問題の正しい理解と認識を深める。特に校(園)内教職員研修については、新たな人権課題に対しての学習を取り入れたり、現地研修や参加型学習等の形態を工夫したりすることで、研修の価値を高め、教職員一人ひとりが人権尊重の理念を確実に高めていくことができるようにする。また、校(園)内組織づくりでは、日々の取組の中で、互いの人権感覚を磨き合う同僚性を持った質の高い教職員集団の構築をより一層図る。
- 人権教育の円滑な推進を図るため、実践上の課題を明らかにし、効果的な指導方法・内容について研究および教材の開発を進める。
- 学校・園の取組をさらに充実させるため、地域総合センターおよび広野教育集会所との連携を図る。
地域社会および家庭における取組
人間の尊厳を認めあい、豊かで民主的な地域社会の形成をめざすため、家庭や地域の生活課題の解決につながる人権学習の重要性を認識し、自主的・自発的な学習活動や各種の社会活動を通じて、部落差別をはじめとするあらゆる人権問題の正しい理解と認識を深め、人権意識の高揚を基盤として、すべての人の人権が尊重され、共に生きる社会づくりに努める。
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人権・福祉の交流の拠点としての地域総合センターおよび広野教育集会所との連携を密にし、人権教育・啓発活動を進める。
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公民館等の社会教育施設においては、部落差別をはじめとするあらゆる人権問題について計画的、継続的な学習を推進し、生活や地域に根ざした人権学習の展開を図る。
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社会教育関係団体の活動の基盤に人権問題とりわけ部落差別の解決への活動を位置づけ、解決に結びつく自主的な取組を推進し、家庭、地域と学校・園が緊密な連携を保ちながら、地域ぐるみで人権意識と連帯感の高揚を図る。
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社会教育関係団体においては、人権教育を推進するための指導者の育成をはじめ、指導体制の充実を図る。
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家庭においては、子ども一人ひとりをかけがえのない存在として尊重し、個性を生かすとともに、他人への思いやりや、命や人権を大切にする豊かな心を育む家庭づくりに努める。
更新日:2025年06月04日