辻岡 逸人

更新日:2021年09月06日

辻岡逸人さんのTOP画像

JA東びわこの直売所の常連さんに「あのトマトはめっちゃ甘いよ」と勧められたのが”辻岡トマト”でした。

今回は、そんな直売所で人気のトマトを作っておられる辻岡 逸人さんにお話を伺いました。

なぜ農業者に?

辻岡さんはトマト農家になってすでに16年ほどのベテラン農家さんですが、農家になるまでの経歴は驚くものでした。

まず、辻岡さんの社会人人生は、東京大学を中退されてパソコンのソフトウェアの会社へ就職されたところからスタートします。その後、お子さんの誕生をきっかけに奥様のご実家のある彦根市へ移り住まれ、同業種で転勤の無いベンチャー企業へ転職されました。

しかし、その会社の業績が伸びたことで本社を東京へ移すことになり、彦根市から動くつもりのなかった辻岡さんは、そこで初めて自分で起業することを考え、農業を思いついたそうです。

それまでは農業とは全く無縁で、どちらかと言うとやりたいことは”教育に携わること”だったそうですが、「ビジネスでは自分のやりたい教育はできない」と思い、農業を選択されたのだそう。辻岡さんの理想の計画は、食卓に笑顔を届ける”農業”をビジネスにして、自分のやりたい”教育”をすることでした。

とは言え、農業を一から始める際には最初の収入はあまり見込めません。辻岡さん自身も農業は儲からないものだという考えがあり、実際に当初試算された計画では年収300万円ほどだったそう。

それまでのお仕事を考えると奥様の了承を得られなかったのではないかと思ったのですが、「なんでか大丈夫だったんだよ。今でも不思議だよね。」と辻岡さん。現在、合計3棟のビニールハウスでトマトとメロンを栽培しておられますが、器の大きな奥様が快く受け入れてくださったお陰で、私たちはおいしい辻岡トマトを食べることができているんですね。

因みに、なぜトマトを選んだのかを尋ねると、「トマトが好きだったから。」と単純明快なお答えをいただきました。

 

 

辻岡さんが話している写真

 

お世話になっている方へお中元として贈るためというのが、メロンを作り始めたきっかけだそうです。

お中元は現在も続けておられ、余った分を販売されているとのことなので出会える機会は少ないかもしれませんが、お家の贈答用に作られたメロン、おいしいに決まってますね。

おいしいトマトの秘訣は?

辻岡トマトがおいしい理由を尋ねると「なんでかわかんないけどおいしい。」が答えでした。「でも、トマトを五感で聴いている。」と辻岡さんは言います。

もちろん、実際に声として聞こえるわけではないですし、スピリチュアル的な声が下りてくるという意味でもありません。トマトが空気中に発するいろいろな成分を肌や匂いで感じるということだそうで、今では虫に食われたりしたトマトがあるとビニールハウスに入った瞬間に「あれ?食われたか?」と感じるそうです。「森林浴を気持ちいいと感じるのと一緒だよ」と辻岡さんはおっしゃいますが、なかなかできることではないですよね。

実は、辻岡さんは農業を始めるうえでどこかで学ばれたわけでなく、まっさらの状態から栽培マニュアルだけでこれまで栽培をしてこられたそうなので、自ら栽培の研究をしてこられた中で体得された能力かもしれません。

一般的に新規に農業を始める際には、ベテラン農家さんに教わったり、県の農業大学校で知識や技術を学んでからスタートをするものなのですが、「マニュアルが読めれば誰でも簡単に作れるよ」とおっしゃいます。

ですが!辻岡さんの「マニュアルが読めれば」は普通の”読めれば”ではありませんでした。マニュアルに書いてある『この時期にこの作業をしましょう』を見て、言われた通りの作業をするだけではなく、「なんでこの時期じゃないといけないのか、なんでこの作業が必要なのか、しなかったらどうなるのか、を説明できるほど理解する」のが、辻岡さんの”読めれば”です。

想像以上のお話に言葉を失っている私に、続けて「植物の基本も理解していないといけない。光合成一つでも、植物にとって何をしているのか、根からどうやって何を吸収しているのかというのを理解して最適な環境を作ってやらないと、いくら水や肥料をやったって吸収できないんだよ。これだけは受験の時に勉強したことが生かせているかな。」と笑って教えてくださいました。

 

これまでに失敗したことはありますか?

もしかして失敗もしたことないのではと思いましたが、失敗はいっぱいしたと伺って、辻岡さんも人間だと安心しました。

でも、やっぱり辻岡さんです。これまでにトマトが病気にかかったりもしたそうですが、初めてかかった病気の場合、そのままほっておくそうなんです。病気が進行したらどうなるのか、どんなスピードで進行していくのか、どこまで広がるとダメなのかに興味が湧いて、それを観察するそうです。そうすると、限界値がわかってきて、次に同じ病気が発生した時も対処ができると言います。もはや研究ですよね。

病気の進行を観察されるときは、もちろん7割ほどが出荷できなくなってしまいますが、次に生かすことができるため、失敗ではなく勉強だと思っておられるそうです。

 

辻岡さんが話している写真

 

辻岡さんのお話を伺っていて頻出するのが「お客さんにおいしいと喜んで食べてもらうことが一番大切」という言葉です。

もちろん、ビジネスとして農業をされていますが、辻岡さんの農業の本質的な部分はお客さんへの想いなんだと感じました。

どこで買えますか?

トマトは大玉と中玉の2種類、メロンはマスクメロンであるアールスメロンを栽培しておられ、JA東びわこの直売所で購入できます。

トマトは4月上旬~6月下旬の間と8月下旬~12月上旬くらいの間で、メロンは年に1回7月頭に販売されているそうです。

トマトの写真
メロンの写真

これからの目標は?

現在、農業の傍ら、河原町の花しょうぶ通りで寺子屋を経営しておられるそうで、当初の「”農業”をビジネスにして、”教育”をする」という計画を実現しておられる辻岡さん。この先の目標をお伺いすると、「トマトの声が聴こえるようになること」。

「トマトの声が聴こえたら、お客さんの笑顔以上の究極の幸せを感じられるんじゃないかと思う」とおっしゃるほどトマトの声に全神経を向けておられるからこそ、おいしい人気のトマトができるのだと思いました。

辻岡さんとビニールハウスの写真

「僕は農家じゃなくお笑い芸人。一生懸命おいしいものを作って、食卓に届いて、家庭で食べた時に『ウマーッ』って言ったときの”笑い”を届ける芸人なんです。」と話す辻岡さんのトマト、ぜひ一度食べてみてください!食卓に笑顔が届きますよ。

この記事に関するお問い合わせ先

産業部 農林水産課 地産地消係

電話:0749-30-6118
ファックス:0749-24-9676

メールフォームからお問合せする