農業所得 Q&A
青色申告の農家、白色申告のうち記帳適用者である農家は、一部対象としておりません。
1.申告について
Q.収支計算とは青色申告のことではないのか。
A.収支計算とは、収入から、その収入を得るための経費を差し引いて所得を計算することです。
収支計算の申告は、「青色申告」と「白色申告」の二つがあります。
青色申告とは、毎日の取引内容を所定の帳簿に正しく記帳している人で、あらかじめ(申告する前の年の3月15日までに)税務署長の承認を受けた人だけがすることのできる申告方法です。青色申告には、税法上有利な特典が認められています。
なお、青色申告につきましては、市役所で受付・相談は行っておりません。詳しくは税務署(電話 0749-22-7640)でご確認ください。
白色申告とは、青色申告の承認を受けなかった方が行う収支計算の申告です。収支計算が必ずしも青色申告というわけではありません。
Q.世帯内で申告する人は誰でもよいか。
A.農業委員会の8月1日調査で申告した農業経営者と一致させてください。経営者が亡くなられた場合、実際の耕作者に合わせて申告いただき、次の8月1日調査で変更してください。
Q.領収書をなくした。でも、確かに代金は支払ったから経費として計上しても構わないか。
A.領収書の再発行を求めることができるものならば、まずは再発行をしてもらってください。
ただし、こういった時のために毎日の取引について、ノートなどに記帳しておくと安心です。
Q.もう自分で耕作をしていないが、それでも申告が必要なのか。
A.耕作をしていない方でも、農地を小作に出していて小作料(現物の受け取りも含む)をもらっている場合は不動産所得になりますので、不動産所得用の収支内訳書を作成してください。小作料を農産物でもらっている場合は、買取り価格などを参考に現金に換算して申告してください。
小作料を支払っている場合は、農業所得の必要経費になります。
Q.農業所得のマイナスを他の所得から差し引くことができるか。
A.農産物を出荷している方については、書類に基づいて収支計算を行い、その結果マイナスの場合、他所得(例えば給与所得など)から差し引いて申告することができます。
Q.家族が食べる分しか作付していない。この場合も申告しないといけないのか。
A.農業所得は、収穫した時点で所得が発生することが税法で定められています。
家族が食べる分、親戚・知人に配る分などを「家事消費分」と呼びますが、家事消費分についても、収穫をしている時点で所得が発生していることになり、申告が必要です。
ただし、家族が1年間食べる分だけでなくなる程度の収穫量では、規模としても小さく、そもそも収益を目的としていないため、赤字と想定されます。農業収入のみを計上し、農業所得は0円という申告で構いません。
Q.専従者控除について教えていただきたい。
A.税法上、生計を一にする親族に労賃を支払っても、これを経費とすることは認められておりません。
ただし、以下の条件を満たした場合、限度額の範囲で経費とすることができます。これを専従者控除といいます。
専従者控除の条件
- 専従者とする世帯内従事者の年齢が15歳以上であること。(その年の12月31日現在の年齢で判断する。)
- 専従者とする世帯内従事者の農業にのみ従事する期間が6か月を超えること。
専従者控除の限度額
以下の数字(ア.)と算式の答え(イ.)のどちらか少ない方となります。
ア.50万円(ただし、専従者が配偶者の場合、86万円)
イ.「専従者控除前の農業所得金額」÷(農業に従事している親族の数+1)
2.収入について
Q.集荷円滑化対策交付金などの補てん金や補助金は、農業所得となるのか。
A.農業に関係する補てん金や補助金については、通常農業所得として申告する必要があります。もちろんそれに対応して、農業に関係する拠出金についても農業所得の必要経費となります。
補てん金や補助金について、収支内訳書に記入する欄は、「(3)雑収入」にあたり、拠出金については、「(ツ)雑費」にあたります。
Q.集落営農組合から昨年の補助金について分配金があった。これはどのように申告すればよいか。
A.入金があった年に申告してください。
Q.家事消費分は出荷していないので、どれくらいの価値になるのかわからない。
A.家事消費分の1俵あたり単価につきましては、合理的な基準を用いることとなります。JAの仮渡金などを参考にしてください。
Q.棚卸高とは何か。
A.棚卸高とは、年末に残り、翌年に繰り越す在庫のことです。詳細なことは税務署にご確認ください。
なお、在庫分が量的に少ない方や、毎年同程度の在庫という方につきましては省略していただいてかまいません。
Q.家事消費は、家族で食べた時の価格で計上すべきなのか。
A.農業に関しましては、税法上収穫した時が収入を得た時と決まっておりますので、収穫した年の新米の価額で年内一括して計上となります。
Q.去年出荷した米の精算金が振り込まれた。これも収入として計上しないといけないのか。
A.農業の収入として計上してください。これは、収支内訳書に記入する欄は、「(3)雑収入」にあたります。
Q.離農後に振り込まれた精算金は、どのように申告すればよいか。
A.年金などと同じ雑所得で計上してください。
3.経費について
Q.家庭菜園で野菜を作っているが、これにかかる費用も経費にあわせてあげてよいか。
A.収入をあげるならば、その収入に対応した分を経費であげることができます。
家庭菜園で収穫した野菜の収穫量に出荷野菜の価格をかけたものを農業所得として計上するならば、家庭菜園の費用を経費としてもかまいません。
ただし、家庭菜園などは、農業というより趣味にあたるため、通常、農業所得の収入・経費には計上しません。
Q.収穫期に人を雇い、その労賃は収穫した米で支給した。この場合の経費計上をどのようにすればよいか。
A.いったん家事消費(収支内訳書「(2)家事消費・事業消費金額」欄)として計上する必要があります。その上で、家事消費のキロ単価に合わせて雇人費(収支内訳書の「(8)雇人費」欄)に計上することとなります。ただし、生計を一にしている親族でないことが条件です。
Q.小作料の支払いがあるが、経費としてよいか。
A.経費となります。収支内訳書の「(9)小作料・賃借料」欄に計上します。
Q.去年の自家用米を種もみとした場合、経費になるのか。
A.自家用米は、去年の申告時収入(家事消費)に計上しているので、経費としていただいて結構です。単価につきましては、収入に挙げた時のキロ単価で計上してください。
Q.農業で使っている電気と生活にかかる電気を分けていない。このため、光熱費に計上すべき額がわからない。どうすればよいか。
A.農業に必要な電気代は農業所得の経費にあたりますが、生活する上で使用している分の電気代は経費になりません。メーターを分けていない場合などは、その必要な部分を明らかに区分できる場合に、必要経費にすることができます。
よって、このような時は、農業に使用しない月を比較するなど合理的な使用割合などで必要な部分を区分してください。
なお、この場合は全体の領収書をノートなどに貼り付け、ノートの空欄に使用割合をメモしておいてください。
Q.車庫を農業用倉庫として使用しているが、この車庫にかかる維持費も経費としてもよいか。
A.農業用倉庫として利用しているということなので、農業に必要なものといえます。よって、この車庫の維持費は、農業所得の必要経費とすることができます。車庫に関連して、車庫自体の固定資産税や減価償却費なども経費とすることができます。
ただし、自家用車を駐車して余ったスペースを倉庫代わりに活用しているケースや自家用車と農機具(例えばトラクター)を同じ車庫に入れているケースにつきましては、合理的な使用割合(延べ床面積の割合など)で農業所得の経費にあたる部分が経費となります。
Q.減価償却費とは何か。なぜ一括で経費として計上してはいけないのか。
A.農業のために使用される資産を買い入れる費用は、これらの資産が使用に耐えられなくなるまでの収入に対応しているといえます。そのため、支出した年にその全額を必要経費とするのではなく、一定の方法によりこれらの資産の使用期間に配分して必要経費化していきます。このような事業用資産を減価償却資産、この配分された必要経費の金額を減価償却費といいます。
Q.中古を取得したが、減価償却費を求める際の耐用年数はどうすればよいか。
中古の減価償却資産を取得した場合は、使用可能な年数を適切に見積もって計算することとなっています。しかし、見積もりができない場合は、下記の式で計算した年数とすることができます。
- 耐用年数を一部経過した中古資産 ⇒ (法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20/100)
- 耐用年数を経過した中古資産は、法定耐用年数の100分の20(切り捨て)を適用
(注意)計算結果の1年未満の端数は切り捨て、2年未満となった場合には耐用年数は2年とします
Q.10年前に農業用倉庫を建てたが、昔の話なのでいくらかかったか分からない。どうすればよいか。
A.建築を依頼した工務店等に確認するなどして、適切に取得価額を見積もってください。
Q.農業用倉庫を修理・増築したが、これは経費となるか。
A.修理の場合、費用が60万円未満の場合、修繕費としてまとめて経費としてあげることができます。
修理費が60万円以上の場合や増築した場合、減価償却費として経費計上することとなります。
Q.コンバインを買い換えたが、下取り価格を差し引いた残りしか支払いをしていない。この場合、経費はどうなるのか。
A.下取り価格は別途収入となります。よって、下取り価格を引く前の価格が経費(減価償却費)となります。
下取り価格の申告につきましては、総合譲渡所得となりますので税務署(電話 0749-22-7640)に確認してください。
Q.トラクターを廃車した。何か経費はないか。
A.取得価額(購入代金)からこれまでの減価償却費総額(使用割合をかける前)を差し引いた残りがその年の経費(除却費)となります。収支内訳書経費欄(ヨ)から(ソ)に計上してください。
Q.機械を購入する時、価格の3割程度の補助金をもらった。減価償却費の計算をする時、補助金を引いた後の価格を取得価額としてよいか。
A.通常農業に関するこういった補助金は、農業所得の雑収入となります。ただし、このようなケースの場合、購入価額から補助金を差し引いた金額を機械の取得価額として減価償却を計算してください。
Q.同居の父親名義で購入した農機具だが、減価償却費を経費計上してよいか。
A.農家世帯内なので、減価償却費として計上してください。ただし、使用料を家族内名義人(この場合父親)に支払っていても経費にはなりません。
Q.収穫まで毎日農作業していたが、この労力はどう経費に反映させればよいのか教えていただきたい。
A.農業に限らず、事業所得では自分自身の労働に対する経費は認められません。
なお、自分に対する慰労として支出した行為は、単に自分のお金を自分のために使ったに過ぎず、農業所得の必要経費とはいえません。
労賃は、誰か(生計を一にする親族を除きます。)を雇い、その対価を支払った場合には、経費となり、収支内訳書の「(8)雇人費」欄に計上することとなります。
Q.土地改良費の経費計上の仕方を教えて欲しい。
A.10アールあたり1万円未満の場合、全額経費に計上してもらって構いません。
10アールあたり1万円以上の場合、支払額をそのまま経費とすることができません。永久資産取得費相当について土地改良区に確認して、それを差し引いて申告してください。
なお、土地改良区から請求される賦課金には、土地改良費だけではなく水利費も含まれています。水利費は全額経費となりますので、土地改良費と分けて、収支内訳書「(イ)租税公課」欄に計上してください。
Q.土地改良費を20年前に30年分一括で支払ったが、経費としてはどのようになるのか。
A.1年あたりの土地改良費を10年後(20年すでに経っているため)まで毎年経費として計上することになります。
ただし、1年分の土地改良費(水利費は除く)が10aあたり1万円以上の場合、支払額をそのまま経費とすることができません。永久資産取得費相当について土地改良区に確認して、それを差し引いて申告してください。
Q.機械をリースしている場合のリース代は経費となるのか。
A.経費となります。収支内訳書の「(9)小作料・賃借料」欄に計上します。
Q.耕作を営農組合に委託したが、実際は自分で耕した。委託費の支払いとオペレーター代の受け取り両方発生したが、実際は差額分の支払いしか行っていない。委託費・オペレーター代それぞれの金額はわからない。申告はどのようにすればよいか。
A.まず、委託費・オペレーター代については、営農組合に内訳を聞いてください。
その上で、委託費につきましては、経費となりますから、収支内訳書の「(8)雇人費」欄に計上することとなります。オペレーター代は収入となりますから、収支内訳書の「(3)雑収入」欄に計上することとなります。
Q.防除については、集落で行うため、集落に対し、委託費を払う。この委託費については、どうやら共済からの補助金を差し引いた額で請求されているらしい。この場合、請求を受けた額のみ経費として計上してよいか。
A.まず、防除代・共済からの補助金については、集落に内訳を聞いてください。
その上で、防除代につきましては、経費となりますから、収支内訳書の「(ト)農薬衛生費」欄に計上することとなります。共済からの補助金は収入となりますから、収支内訳書の「(3)雑収入」欄に計上することとなります。
4.集落営農について
Q.農作業を集落でまとめて行っているので、領収書が手元にない。所得計算はどうすればよいか。
A.集落に内訳を問い合わせてください。
集落は、各農家の出資割合(面積など)に応じて「経費をいくら払って、出荷売上の分配がいくらだったか。」という明細を作成しなければなりません。
集落は、各農家から農作業にかかる経費を徴収して作業を行っています。そして出荷代金や補助金を配分しています。よって、どういう入り繰りがあったかということは、農家には分からず、集落が明細を渡さなければいけません。
Q.私の集落は、先日特定農業団体となったが、法人税等はどうなるのか。
A.規約など特定農業団体に関する資料を持って税務署にご確認ください。
なお、あなたの所属する特定農業団体が「人格なき社団」に該当する場合、法人住民税がかかりますので、別途市役所・県事務所にお尋ねください。
Q.集落で購入している機械については、組合員の経費となるのか。
A.毎年の減価償却費は経費になります。
減価償却費については、その年の経費分を集落で計算後、出資割合(面積など)に応じて割り振ることとなります。
更新日:2024年09月02日