第16回舟橋聖一文学賞・第34回舟橋聖一顕彰青年文学賞が決定しました！

令和4年10月16日（日曜日）、東京で開催した選考委員会による選考の結果、第16回舟橋聖一文学賞・第34回舟橋聖一顕彰青年文学賞の受賞者が決定しました！
授賞式につきましては、令和4年12月20日（火曜日）13時30分より彦根市役所本庁舎特別応接室にて開催いたします。

授賞式は新型コロナウイルスの感染拡大状況等により変更等が生じる場合がございます。

各文学賞受賞者

各文学賞受賞者一覧
賞名	書籍名・作品名	受賞者名
第16回舟橋聖一文学賞	『帆神北前船を馳せた男・工楽松右衛門』	玉岡かおる
第34回舟橋聖一顕彰青年文学賞	『順風満帆』	馬場広大

第16回舟橋聖一文学賞『帆神北前船を馳せた男・工楽松右衛門』玉岡かおる

舟橋聖一文学賞は、文学の振興を通じて、彦根市民の豊かな心を育み、香り高い文化を築くため、名誉市民である舟橋聖一の文学の世界に通じる優れた文芸作品に対し賞をお贈りしています。

著者プロフィール

玉岡かおる

1956年（昭和31年）、兵庫県生れ。神戸女学院大学文学部卒。1987年（昭和62年）『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞し、作家デビュー。2009年（平成21年）、『お家さん』で織田作之助賞受賞。2022年（令和4年）、『帆神北前船を馳せた男・工楽松右衛門』で新田次郎文学賞受賞。主な著書に『天涯の船』『負けんとき―ヴォーリズ満喜子の種まく日々―』『天平の女帝孝謙称徳』『花になるらん』『姫君の賦千姫流流』『春いちばん賀川豊彦の妻ハルのはるかな旅路』などがある。

受賞作品

江戸中期、播州高砂に漁師の子として生を承けた松右衛門は、船乗りに憧れ、兵庫津の回漕問屋に雇われる。やがて菱垣廻船の船頭として経験を積み、大阪・江戸間の番船競走に勝利して一躍その名を知られるように。独立して宮本屋を名乗り、北前船の海商として力を蓄える一方、当時の和船の弱点であった帆に改良を加え、その帆は「松右衛門帆」として全国に普及。さらに幕府に命じられて蝦夷地の港湾事業にも手を染め、ついには「工楽」の姓を与えられる――。熱情と才覚で江戸海運に革命をもたらした知られざる快男児と、彼を育み支えた四人の女の生涯を描く。

第34回舟橋聖一顕彰青年文学賞優秀作品『順風満帆』馬場広大

作家・故舟橋聖一氏は、井伊直弼公を題材にした小説『花の生涯』を執筆し、それが後に映画や演劇となり、また第1回のNHK大河ドラマとして放映されたことで、直弼公と彦根市の名が全国に知られるようになりました。そのため、本市では、このような多大なる功績をたたえ、同氏を彦根市名誉市民第1号にするとともに、広く青少年の文学奨励をはじめ、教育・文学の振興を図るため、同氏を顕彰する文学賞として、平成元年度から文学の登竜門となる「青年文学賞」を設けました。

『順風満帆』作品詳細

作品部門

小説

あらすじ

自動販売機のメンテナンス会社に勤める智明は、夜遅くや、仕事の合間に、母によく電話をかける。智明の生まれ故郷でもある島で、母は祖父の介護をしている。

母の疲れた声を聞いて思い出すのは、同じように母に電話をかけていた学生時代のことだった。都会になじめず、授業にも出席できなくなった智明は、母との電話で気をまぎらわせていた。結局、大学を中退することになっても、母は地元でやさしく迎え入れてくれたのだった。

日ごとに弱っていく祖父と最後に会っておくため、智明は、父と母と三人で、島へ帰ることになる。久しぶりに会った祖父は、娘や孫の名前すら忘れていた。帰りの船で、智明は、母の本当の思いを父から聞かされる。自分がかけてきた苦労を思い知った智明は、かつて母に吐いた言葉を反省する。しばらくして亡くなった祖父の葬儀で、智明は孫として弔辞を読む。思い出を振り返り、祖父を見送ってから、智明の心境に変化があらわれる。仕事において、思いやりを持って他人と接することができるようになっていたのである。

ある日、仕事を終えて帰宅し、香典返しのいくらを食べているうちに、智明の胸に祖父の死の悲しみが迫ってくる。泣きながら母に電話をかけ、本音を吐き出さずにはいられないのだった。

作者プロフィール

写真/本人提供

馬場広大

1993年（平成5年）、鹿児島県出身。関西学院大学社会学部中退。2017年（平成29年）、「みかんの木」で織田作之助青春賞受賞。2022年（令和4年）、「山の女」で宮古島文学賞受賞。現在、会社員。宮崎市在住。

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