第17回舟橋聖一文学賞・第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞が決定しました!

更新日:2023年11月22日

令和5年10月29日(日曜日)、東京で開催した選考委員会による選考の結果、第17回舟橋聖一文学賞・第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞の受賞者が決定しました!
授賞式につきましては、令和5年12月19日(火曜日)13時30分より彦根市役所本庁舎特別応接室にて開催いたします。

各文学賞受賞者

各文学賞受賞者一覧
賞名 書籍名・作品名 受賞者名
第17回舟橋聖一文学賞 『口訳 古事記』 町田 康
第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞 『バニラ、ストロベリー、それからチョコレート』 吉田 詩織

 

第17回舟橋聖一文学賞 『口訳 古事記』 町田 康

舟橋聖一文学賞は、文学の振興を通じて、彦根市民の豊かな心を育み、香り高い文化を築くため、名誉市民である舟橋聖一の文学の世界に通じる優れた文芸作品に対し賞をお贈りしています。

著者プロフィール

町田康さん写真

写真/本人提供

町田 康(まちだ・こう)

作家。1962年大阪府生まれ。1997年『くっすん大黒』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞、2000年「きれぎれ」で芥川賞、2001年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、2002年「権限の踊り子」で川端康成文学賞、2005年『告白』で谷崎潤一郎賞、2008年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞。他の著書に「猫にかまけて」シリーズ、「スピンク日記」シリーズ、『ホサナ』『記憶の盆をどり』『湖畔の愛』『ギケイキ』『男の愛 たびだちの詩』『しらふで生きる 大酒のみの決断』『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』『口訳 古事記』など多数。

受賞作品

口訳古事記書影

日本最古の神話「古事記」を、関西弁をまじえた今の話し言葉で現代語訳。天地開闢からイザナギとイザナミによる「国生み」と黄泉国行、天照大御神の「天の岩戸」ひきこもりと追放された乱暴者・須佐之男命のヤマタノオロチ退治、何度も殺されては甦った大国主神の国作り、天孫降臨をめぐる攻防、父の天皇に疎まれた日本武尊による熊曽・出雲征服と非業の死、応神天皇、仁徳天皇の治世まで。アナーキーな神々と英雄たちが繰り広げる奔放なる愛と冒険、裏切りと謀略にみちた日本最古のドラマを、破天荒な超絶文体で現代に降臨させた作品。

受賞コメント

今を生きる私たちが昔と連続していることを確かめたくて古事記を現代の言葉に書き換えた拙著がかかる栄誉を受けたことを嬉しく思います。その思いが一入なのは、その賞が天照大御神が誓約を行った際生れた活津日子根命に縁がある彦根市より授けられる賞であること、そして十代半ば頃に読んで自分の言語感覚に幾許かの影響を及ぼしているに違いない舟橋聖一の名を冠した賞であるからです。彦根市の皆様に感謝申しあげます。

第35回舟橋聖一顕彰青年文学賞優秀作品 『バニラ、ストロベリー、それからチョコレート』吉田 詩織

作家・故舟橋聖一氏は、井伊直弼公を題材にした小説『花の生涯』を執筆し、それが後に映画や演劇となり、また第1回のNHK大河ドラマとして放映されたことで、直弼公と彦根市の名が全国に知られるようになりました。そのため、本市では、このような多大なる功績をたたえ、同氏を彦根市名誉市民第1号にするとともに、広く青少年の文学奨励をはじめ、教育・文学の振興を図るため、同氏を顕彰する文学賞として、平成元年度から文学の登竜門となる「青年文学賞」を設けました。

『バニラ、ストロベリー、それからチョコレート』作品詳細

作品部門

小説

あらすじ

両親の離婚をきっかけにミッションスクールの提携校間を転校した高校一年生の明里は、海辺の街に父親ひとりを置いてきてしまったことへの罪悪感を抱えている。また、自身の一重瞼という容姿に劣等感を抱いており、美容整形をしたいと考えながら日々を送っていた。

明里の高校では放課後に、公立中学校から進学してきた生徒に行われるキリスト教に関する外部生講習というものがある。提携校からの編入である明里も一応それに出席させられており、毎回同じような感想を書き続けていた。そこでひょんなことから、第一志望校に落ちてこの高校に来た長沢という少年じみた女子と親しくなる。

「心ここにあらず」になりがちな明里を自身の恋人に似ていると話す長沢。放課後だけのつきあいではあったものの、日を追うごとに少しずつおたがいのことを話すようになり、ふたりの距離はいっそう縮まっていく。

ある日の放課後、ふたりで出かけ、長沢を知る人物とばったり会う。その人と長沢の会話から、長沢の恋人というのは彼女自身の亡くなった兄で、長沢が少年然とした格好を貫くのは、鏡の中で、もう会えない恋人の姿を見るためなのだと悟る。

しかし、長沢が長沢ということには変わらないと思う明里は、かつて、明里のコンプレックスが何であれ明里が明里であることには変わりないと言ってくれた長沢の思いそのものを受け止めたいと思う。

明里は夏休み中に美容整形をすることを決意する。そして長沢と、父親のいる海辺の街へ行ってうんと泳ぎたいと思い、彼女を誘う。

作者プロフィール

吉田詩織さん写真

写真/本人提供

吉田 詩織

1994年(平成6年)生まれ、宮城県出身。

宮城学院女子大学学芸学部日本文学科卒業。

2019年6月分、2022年7月分山新文学賞佳作、集英社Cobalt短編小説新人賞202回受賞、2019年度集英社Cobalt短編小説新人賞最優秀賞受賞。

受賞コメント

誰かや何かを思う気持ちが尊重される対等な人間関係を書こうと思っていました。母校がキリスト教かつ別学の学校だったため、宗教色のある女子校というのを描く点で参考にしました。

わたし自身、属するコミュニティにおいて、多数であることや少数であることというのはその人自身の優劣とはまったく関係ない、ということを考えさせられる機会が多かったこともあり、それについて自分なりの考えや感情を書きたいとずっと考えていました。わたしにとっての執筆のテーマなのかもしれないと改めて感じました。

また、人が人と出会って些細な気持ちの変化がおとずれる物語が好きで、起承転結がはっきりとした大きなうねりのある物語と言うより、A→B→A´のように進行する、他者からみれば大きな変化はなくとも、本人たちにとって何かが確かに変わっている、というような小説を書き続けたいです。

かつて自分が心のよりどころにした本の数々のように、誰かがふとした時に思い出してくれるような物語をつくっていけるよう、よりいっそう努力したいと思います。

この記事に関するお問い合わせ先

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