第19回舟橋聖一文学賞・第37回舟橋聖一顕彰青年文学賞が決定しました!
令和7年10月28日(火曜日)、東京で開催した選考委員会による選考の結果、第19回舟橋聖一文学賞・第37回舟橋聖一顕彰青年文学賞の受賞者が決定しました!
各文学賞受賞者
| 賞名 | 書籍名・作品名 | 受賞者名 |
|---|---|---|
| 第19回舟橋聖一文学賞 | 『惣十郎浮世始末』 | 木内 昇 |
| 第37回舟橋聖一顕彰青年文学賞 | 『胸のイボ』 | 高屋 凪沙 |
第19回舟橋聖一文学賞 『惣十郎浮世始末』木内 昇
舟橋聖一文学賞は、文学の振興を通じて、彦根市民の豊かな心を育み、香り高い文化を築くため、名誉市民である舟橋聖一の文学の世界に通じる優れた文芸作品に対し賞をお贈りしています。
受賞作品
『惣十郎浮世始末』出版社:中央公論新社
改革の嵐が吹き荒れ、疫病が日常をおびやかす江戸後期。浅草の薬種問屋「興済堂」で火事が発生し、焼け跡から二体の骸が見つかった。北町奉行所の定町廻同心・服部惣十郎は、その不審な状況に疑念を抱き、岡っ引の完治や小者の佐吉とともに犯人を追う。一方、町医者の梨春は豊かな知見で惣十郎の調べを助ける傍ら、疱瘡(天然痘)の苦しみから人々を救うための医療書の翻訳を世に出したいと奔走していた。怪しげな祈祷師の騒動や、湯屋の三助の母殺し疑惑などにも向き合いながら、やがて惣十郎は思いも寄らぬ真相に辿り着く……。罪を見つめて、人を憎まず。江戸の町に生きる人々の哀歓を時代背景とともに丹念に描く、捕物帳の新たな傑作。
著者プロフィール
(C)関めぐみ
木内 昇(きうち・のぼり)
1967 年、東京都生まれ。2004 年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08 年に刊行した『茗荷谷の猫』が話題となり、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。11 年に『漂砂のうたう』で直木賞、14 年に『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞の三賞、25 年に『雪夢往来』で中山義秀文学賞、同年『奇のくに風土記』で泉鏡花文学賞受賞を受賞。他の作品に『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『剛心』『かたばみ』『惣十郎浮世始末』『浮世女房洒落日記』などがある。
受賞コメント
このたびは、舟橋聖一文学賞をいただきまして、大変光栄に存じます。
『惣十郎浮世始末』は、私にとってはじめての捕物帳となります。本作の連載をはじめるにあたり、付き合いの長い文芸記者の方から「捕物帳を書いてほしい」とのご提案を受けました。それまで捕物帳を書こうと思ったことすらなかった私は、大変戸惑いました。また、小説の題材に関しては自分で決めていたため、提案に沿って書くというのもはじめてのことだったのです。
自分の中での定法に拠ることなく、一作一作なにかしらの挑戦をしようと心がけて書いてきたものの、今回は新聞連載という大舞台。あまり冒険するのはどうか。でも、自分の仕事によい形で風穴をあけられるかもしれない——だいぶ逡巡したのちに挑戦することにしたのです。
この挑戦が吉と出たか凶と出たか。それは読者に委ねるよりありません。ただ、本作に登場する惣十郎や梨春、完治、佐吉、お雅といった面々と共にいる時間は、私にとってとにかく楽しい時間でした。そうやって書き上げた作品が、このような賞をいただけて、報われたように感じています。この小説に関わってくださった、すべての方に感謝申し上げます。
第37回舟橋聖一顕彰青年文学賞優秀作品 『胸のイボ』高屋 凪沙
作家・故舟橋聖一氏は、井伊直弼公を題材にした小説『花の生涯』を執筆し、それが後に映画や演劇となり、また第1回のNHK大河ドラマとして放映されたことで、直弼公と彦根市の名が全国に知られるようになりました。そのため、本市では、このような多大なる功績をたたえ、同氏を彦根市名誉市民第1号にするとともに、広く青少年の文学奨励をはじめ、教育・文学の振興を図るため、同氏を顕彰する文学賞として、平成元年度から文学の登竜門となる「青年文学賞」を設けました。
『胸のイボ』作品詳細
作品部門
小説
あらすじ
認知症の祖母は「せつない」と昔を懐古することが多くなった。祖母を介護する大学生の真智は、幼い時に見ていた祖母の姿との乖離にショックを受ける。かつて一緒に入浴した際に見た祖母の胸には、美しい肌に似合わないイボが一つあった。そのイボに触れながら、やはり昔から祖母は「せつない」と口にしていた。
優しく綺麗好きで美しかった祖母は、入浴を拒否し、寝たきりになり、わがままを言うようになっていく。また、祖母本人も美しかった過去の自分との乖離に「せつない」と何回も口にする。そんな中、真智の胸に祖母と同じイボができる。有り合わせのカッターやミシン糸を使い、自力でイボを切除すると晴れ晴れしい気持ちになり、そのうちイボのことなど忘れてしまう。祖母はだんだん真智の知る祖母ではなくなり、どこか冷めた気持ちで接するようになる。祖母の死後、三十歳になった真智は夫と娘と暮らしていたが、風呂上がりに胸にイボができる予兆を感じるのだった。
作者プロフィール

高屋 凪沙(たかや なぎさ)
2014年、関東学院大学文学部比較文化学科入学。
2018年、関東学院大学文学部比較文化学科卒業。
2018年、関東学院大学大学院文学研究科比較日本文化専攻博士前期課程入学。
2020年、関東学院大学大学院文学研究科比較日本文化専攻博士前期課程修了。
2020年、関東学院大学大学院文学研究科比較日本文化専攻博士後期課程入学(現在在学中)。
受賞コメント
応募資格の三十歳である最後の年に、賞をいただけて、大変うれしく思います。
この小説は祖母との思い出をもとに書いた話で、温かい思い出も、冷たい思い出も、すべて一人の人間の物語だと思い、作品にしました。自分の祖母との思い出の欠片が、主人公真智や真智の祖母の物語の一部として、自然に溶け込んでいたらいいなと思います。
自分自身は、そんなに長い介護経験がないので、断片的な記憶と調べた内容から介護の場面は書きました。書いていて難しかったのは、祖母の年を取ることへの受け入れ難さ、認知症による混乱です。そんな祖母の姿を見て真智の気持ちに変化が生じるので、どちらの気持ちも表現したかったです。
また対比表現は、読んでいても書いていても好きなので、この作品でも美しい姿と年老いて汚れたままになっている姿を書きました。年を取るということを伝えるのを表現しやすかったこともありますし、登場人物の性格も表現できたと思います。
人のもつ様々な感情や考えを描き出すというのは難しく、書くことに消極的になることもありますが、今回このような賞をいただき、より積極的に物語を書きたいと思えるようになりました。これからも日常の中の物語を自分なりに描き出せたらいいなと思います。
この記事に関するお問い合わせ先
教育委員会事務局 図書館
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更新日:2025年11月21日