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               <総評> 
         今年三月、東日本を襲った大地震と津波、それに伴う原発事故によって、私達は今なおいろいろなことを考えさせられている。 
           今回の応募作品の中に、直接この災害に触れたものは無かったが、身近な事象に眼を注ぎ、そこから掬いあげられた普遍性ある作品に、共感を覚えた。 
           「作品」には、人との交流が描かれ、社会との繋がりがあり、その上で現在の自分が描かれる。その「作品」の書き出しは、簡素かつ広がりがあって読者に次の展開を期待させるものが要る。自分の思いを余すところなく伝え、締め括りは余韻を残して終わりたい。読者は読み終えた後、作品に込められた筆者のメッセージに思いを馳せ、両者はテーマを共有する。 
           昨今メディアは、人間関係が希薄化した日本を「無縁社会」であると報じるが、私達は作品を媒介として、テーマを共有し繋がっている。彦根「市民文芸」を、繋がりの場と位置づけたい。 
              (山口 育子) 
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